牛の泌乳生理を理解し、適切なユニット装着のタイミングで搾乳を行うことで、搾乳時間や乳量が改善することがあります。このトピックでは「牛の泌乳生理」「適切なユニット装着の搾乳のタイミング」「オリオンの勧める正しい搾乳手順」をご紹介します。
生乳は血液により作られています。生乳1リットルを生成するためには血液400~500リットルが乳房内を循環しなくてはいけません。血液は乳房内にある筋上皮細胞乳腺細胞から乳腺細胞を経て生乳に変わり、腺胞腔に溜まります。腺胞腔に溜まった生乳は小乳管・大乳管・乳槽・乳頭槽を経て乳頭孔から体外へ射出されます。
乳房を大きく2つに分けると、乳腺葉(乳腺細胞~大乳管)と乳槽(乳腺槽~乳頭孔)になり、乳腺葉には80%~90%、乳槽には10%~20%の生乳が溜まっています。
搾乳の際は、乳汁流下ホルモン「オキシトシン」の働きで乳房に溜まっている生乳を搾乳します。オキシトシンは乳頭マッサージやその他の条件反射で分泌され、生乳の排出を促します。
オキシトシンによる分泌時間は乳頭マッサージ後1分前後で分泌のピークに達し、4~5分作用して減少します。オキシトシンの作用する時間に合わせて搾りきることがポイントです。
一方で、乳牛にとって不快な刺激(叩く、蹴る、真空の変動、過搾乳等)によって泌乳を抑制するホルモン「アドレナリン」が分泌され、泌乳機能を低下させます。1度アドレナリンが分泌すると15分~20分は回復しません。乳牛本来の泌乳能力を引き出すためには、アドレナリンを出さない搾乳作業を心がけることもポイントです。
乳頭・乳房の張りを見逃さずユニット装着を行うことがポイントです。乳頭に刺激を加えて1分前後でオキシトシンの分泌量がピークに達すると、乳頭・乳房が張ってきます。オキシトシンの分泌と合致したタイミングで搾乳を行うことで泌乳量がアップし、搾乳時間が短くなった事例もあります。
弊社では必ず搾乳立ち会いを行い、泌乳量の測定をしています。
◎理想的なユニット装着をした時の泌乳量
泌乳ピーク量が高く、乳量も多くなります。搾乳時間もオキシトシンが分泌している5分前後で終了します。
◎ユニット装着が早い時の泌乳量
装着後1分近く泌乳量の少ない状態が続き搾乳前の過搾乳が起きます。 過搾乳によりストレスが加わることでアドレナリンが分泌され、泌乳ピークが低く、乳量も減少します。また、泌乳初期であっても、過搾乳になることで乳頭への負担が大きくなり、乳頭びらんの原因となる恐れがあります。
◎ユニット装着が遅い時の泌乳量
ユニット装着直後に泌乳のピークがあり、そのまま泌乳量が低下し、乳量も減少します。オキシトシンの力を有効に活用出来ていない搾乳です。乳頭清拭とユニット装着が別の作業者の場合や作業者1人あたりのユニット台数が多い場合に起こりやすいです。
◎ユニットの離脱が遅い時の泌乳量
搾乳終了後の過搾乳が起きている状態です。ライナースリップやユニットの蹴落としが多くなり、乳頭損傷の原因になります。自動離脱装置を活用するか、自動離脱装置を導入済みの場合には離脱タイミングの調整を行う必要があります。もし搾乳終了時に乳頭が赤く(紫色)変色している場合は、過搾乳かマッサージ不足が考えられます。
搾乳手順は牧場によって異なりますが、オリオンで勧める正しい搾乳手順を実施することで、お使いの搾乳機やディッピング剤の効果を十分に発揮させることができます。
オリオンではプレディッピングとポストディッピングを推奨しています。搾乳前にプレディッピングを行うことで乳頭を殺菌し、疾病のまん延を防ぎます。搾乳後のポストディッピングを行うことで搾乳で開いた乳頭孔から細菌が入るのを防ぎます。