洗剤の知識

正しく洗浄を行うには

洗剤の洗浄力を正しく発揮させるには、洗剤の使用方法を守ることや、正しい洗浄方法を行うことが大切です。このトピックでは洗剤の効果を発揮させる4つの条件と、洗浄方式について解説します。

洗浄に必要な4条件

洗剤の洗浄力を十分に引き出すためには、必要な条件が4つあります。条件は『濃度』、『温度』、『時間』、『水量』です。1つでも欠けてしまうと洗浄不良が発生しますのでご注意ください。4つの条件を守ることが、安心・安全な牛乳(生乳)の生産につながります。

洗浄に必要の4条件

濃度

  • アルカリ性洗剤:0.5%
  • 酸性洗剤:0.5%

下の写真はスキムミルクの溶液に濃度の異なったアルカリ性洗剤を投入したときの分解度合いを示しています。0.1%、0.3%、0.5%の濃度でそれぞれ投入してから7分間経過した時点では、アルカリ性洗剤の濃度が0.5%の時が最もスキムミルクの成分が分解していることが分かります。ただし、濃度が高ければ高いほどよく分解されるわけではありません。適切な濃度を守ってください。

温度

  • アルカリ洗浄・酸洗浄温度:投入温度 60~80℃/排水温度40℃以上をキープするのがポイントです。
  • すすぎ温度:投入温度 35~40℃で牛乳の温度に近い温度でのすすぎがポイントです。

下の写真は、スキムミルクの溶液にアルカリ性洗剤を0.5%投入した時に、溶液の温度が20℃の時と44℃の時を比較しています。洗剤を投入してから1分経過した時点で、44℃の溶液の方がスキムミルクの成分が分解されているのが分かります。

時間

  • スキムミルク1%溶液(45℃)にアルカリ性洗剤0.5%投入した場合、投入後3分で分解し始めて、完全に分解するには7~10分必要です。
  • 洗浄時間が長すぎると、洗浄温度が下がり再付着する危険性がありますのでご注意ください。

下の写真は同じ温度のスキムミルクの溶液に0.5%のアルカリ性洗剤を投入した場合に時間経過による分解の度合いを示したものです。経過時間が7分の時に、最もスキムミルクが分解されていることが分かります。

水量

  • 指定の水量を守ってください。洗浄水量は配管の長さ、太さ、ユニット数などから算出します。洗浄水量が多すぎると洗浄液が無駄になってしまいます。
  • 洗浄槽に溜まった洗浄水が循環する際、洗浄槽の吸込みパイプからエアーを吸わせない水量が必要です。洗浄水量が少ないとエアーの吸込みが多くなり、スラグ流の形成が困難になることによる洗浄不良や洗浄温度の低下につながります。

日本で販売されている搾乳機器の洗浄方式

主要な洗浄方式は4種類あります。

トリプル洗浄方式

殺菌・アルカリ洗浄・酸洗浄の3つのサイクルを確立し、細菌の発生を抑えて配管内の清潔さを保ちます。

エコウォッシュ洗浄方式

アルカリ洗浄後にすすぎを行うことで酸リンス剤との中和をなくし、安全性と酸リンス剤の効果を高めます。

ヨーロッパ方式

アルカリ洗浄後にすすぎで終了します。ただし、酸洗浄はアルカリ洗浄後、硬度に応じて使用頻度を増やしてください。

[酸洗浄の頻度の目安] 0~80ppm:3日に1回、1~150ppm2日に1回、151ppm以上:毎回

アメリカ方式

酸リンス剤でアルカリ性の洗浄成分を中和して酸の雰囲気を配管内に残すことで、ミネラルの付着を防止すると同時に細菌の増殖を抑えます。


酸洗浄と酸リンス方式の違い

洗浄

生乳や洗浄水に含まれるカルシウムやマグネシウムの汚れを落とします。硬度が高い水の場合は、使用頻度を増やす必要があります。

酸リンス

洗浄水に含まれているカルシウム・マグネシウムを酸化カルシウム・酸化マグネシウムに変化させて配管内に付着しにくくします。また配管内のpHを4以下にして次の搾乳まで細菌の増殖抑えます。また、酸リンスを使用するとすすぎの工程を1回削減できます。

スラグ流

スラグ流とは、エアーと真空の差圧により形成される水のブロック流です。ミルク配管内全体を洗浄する際にブラシの役割を担っています。洗浄の際にスラグ流がないとミルク配管全体を洗浄できません。スラグ流はパーラーでは20個、パイプミルカーでは15~20個必要といわれています。最初の5~10個で主な汚れを落とし、残りの10個で細かい汚れを落とし切ります。