カウスカウトを効果的に使用するには、飼養されている乳牛の生活(採食時間や反すう時間)がどのようなものかを知る必要があります。ここでは牛舎別でみる乳牛の採食時間や反すう時間について解説します。
放牧は、乳牛本来の生態に近い状態での飼育方法です。1日の採食時間は概ね6~11時間で昼間に多く、 夜間は1日の採食時間の9~40%程度、採食回数は1日6回程度で早朝と日没前に集中的に食べています。反すう時間は1日6~9時間で、夜間に多く、その内約1/3は立って、2/3は横臥状態で反すうを行うといわれています[ 鈴木省三 総説・乳牛の行動]。
舎飼いされた乳牛については、比較的古いデータですが、フリーストール飼養で季節ごと、それぞれの行動時間の調査結果が表1のようになっています。
まだ濃厚飼料と粗飼料を分離給与していて泌乳能力も5,000kg程度だった時代のデータにもかかわらず、近年のTMR給与・高泌乳牛での行動および生態の変動値とほとんど同じであることが分かります。
近年になって、フリーストール・TMR飼養体系になってからのデータはいくつかあります。北海道で夏と冬に行った試験を表2に示します。
夏場には採食時間は減少しますが、新鮮な飼料を給与した時の採食行動が活発になり、給与時以外の自発的な採食時間が少なくなる傾向があります。それに対して冬場は給与時と同じくらいその後の時間帯にも採食が行われています。
また、根釧農試では1998年と2007年にフリーストール農場の乳牛行動調査を行っており、そこでの結果を表3、4に示しました。
表4では、2007年の平均採食時間は5.8時間で、1998年の調査より1日の採食占有割合は増加していました。この原因としては、この間の産乳能力の向上もあり、搾乳時以外に給飼やエサ寄せを行うようになったためと考察しています。
上記を目安に群全体の平均より採食時間が著しく長い、あるいは短い個体は注意深く観察しましょう。
①鈴木省三 日畜会報 1971年 42巻 8号 p. 363-370 総説・乳牛の行動
②三村 耕 日畜会報 1969年 40巻 3号 p. 126-128 短報 開放放し飼い牛舎における乳牛の行動型研究
③早坂貴代史 家畜管理学会報 1991年 27巻 別冊号 p. 2-6 夏期に認められる乳牛の行動・生態の特徴
④高橋圭二ら 家畜管理学会報 2007年 43巻 1号 p.48-49 乳牛舎における牛床の物理的特性と牛床横臥率
北海道大学獣医学部予防治療学修士課程修了後、長野県畜産試験場酪農部で18年間「乳牛の飼養管理に関する試験研究」に従事。その後、長野県畜産試験場場長として試験研究を総括。平成26年よりオリオン機械㈱の顧問となる。